実は優秀な検査 ~尿検査~
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実は優秀な検査 ~尿検査~
当院では、来院時に尿検査をお願いしています。
尿検査と聞くと、手間がかかって面倒に感じる方もいらっしゃるかもしれません。
確かに紙コップに尿を取って提出するのは、気が進まないかもしれませんが、尿検査には体への負担が少なく、さまざまな項目を短時間で確認できるという利点があります。
今回は、この尿検査についてお話ししたいと思います。
そもそも尿とは何か
成人は1日に約1~1.5リットルの尿を排出します。
尿は、腎臓が全身を流れる血液から不要な物質や余分な水分をろ過することで作られます。腎臓は、血液から体に必要な成分と不必要な成分を分ける「フィルター」のような役割を果たしているのです。単なるフィルターと思われるかもしれませんが、腎臓が1日にろ過する血液の量は、なんと150リットルにもなります。お風呂の浴槽1杯分(約150リットル)を思い浮かべてみてください。これだけの量の血液をろ過して、尿が作られているのです。
排尿時間についての豆知識
余談ですが、排尿にかかる時間はおよそ21秒であるという研究結果があります(Proc Natl Acad Sci USA (PNAS) 2014; 111 (33): 11932-37)。驚くことに、この21秒という排尿時間は、体重3キロ以上の哺乳類でほぼ共通しているのだそうです。猫もライオンも21秒をかけて排尿します。これを知ると、21秒という時間に神秘的な印象を抱くかもしれませんね。もしも常に21秒を大幅に超える排尿時間がかかる場合は、体調の不調を疑った方が良いかもしれません。
尿の成分
尿の成分の90%以上は水分ですが、以下のような物質も含まれています。
• 尿素(タンパク質の代謝物)
• アンモニア(尿の臭いの原因)
• クレアチニン(筋肉で使われたタンパク質の老廃物)
• 尿酸(プリン体の代謝物)
• ナトリウム(塩分摂取量に比例)
健康な人の尿の成分はほぼ一定ですが、体に異常があると健康な時には含まれない物質が尿に現れることがあります。
尿検査でわかること
では、尿検査では何が分かるのでしょうか?
尿検査では、糖、蛋白、潜血といった項目を調べることで、体の異常を早期に発見したり、病状を推測したりすることができます。これらの異常が見つかっても、自覚症状が出にくい場合が多いため、尿検査は病気の早期発見にとても役立ちます。また、尿の色を観察するだけでも体調の変化に気づくことができます。
いつも身近にあるため、つい軽んじてしまいがちな尿検査ですが、実はさまざまな情報を教えてくれる優れた検査です。この尿検査の隠れた実力を知り、少しでも前向きに受けていただければ幸いです。
項目 | 内容 | 正常値 |
尿蛋白 | 腎機能の低下などがあると体内に残るべき蛋白が尿と一緒に漏れ出てしまいます | 陰性 (―) |
尿糖 | 血液中の糖が規定以上の濃度(約160~180mg/dl)を超えると、体内で吸収しきれず尿に溢れ出ます | 陰性 (―) |
尿潜血 | 尿路結石や膀胱炎など、尿の通り道に何らかの出血源があることが分かります | 陰性 (―) |
ケトン体 | 下痢、嘔吐など消化吸収トラブル。絶食などの無理なダイエット、糖尿病で糖のコントロールが悪い時に陽性になります | 陰性 (―) |
比重 | 糖尿病や脱水症の場合は比重が高く、腎不全や尿の濃縮機能低下があると低くなります | 1.010 ~1.030 |
尿の色 | 不調の可能性 |
赤~赤褐色 | 血尿の可能性 |
黄~琥珀色 | 肝臓の不調の可能性 |
濃い色 | 脱水、血尿の可能性 |
濁り | 膀胱炎の可能性 |