当院での甲状腺治療➃ 甲状腺のしこり~甲状腺腫の症状や検査~
- クリニックからのお知らせ
- 甲状腺疾患
- スタッフ・院長コラム
甲状腺腫とは
甲状腺に生じる「しこり(結節)」のうち、一部は甲状腺腫瘍と呼ばれます。これらは 悪性 と 良性 に分類されます。
【甲状腺腫瘍(良性)】
良性に分類され、濾胞腺腫と呼ばれます。良性の甲状腺腫瘍は、近くの臓器への影響が少なく、転移の心配がないため、多くの場合治療の必要はありません。しかし、腫瘍が大きい場合や悪性が疑われる場合には、手術が勧められることもあります。
【甲状腺腫瘍(悪性)】
腫瘍とは、異常な細胞が無秩序に増殖し続ける状態を指します。このうち、悪性腫瘍には甲状腺がんやリンパ腫が含まれ、治療が必要です。ただし、甲状腺にできるしこりのうち悪性腫瘍の割合は約10%と決して高くはありません。
【その他の良性のしこり】
甲状腺にできるしこりには、「腫瘍」とは異なる種類の良性のものもあります。その代表的な例が以下の2つです
腺腫様甲状腺腫:ほぼ正常な細胞が、刺激によって部分的に増加することで生じます。
のう胞:水分がたまることで形成されます。
これらの良性のしこりは、ほとんどの場合治療の必要はありません。しかし、のう胞に水分が多く溜まって首に圧迫症状が出る場合や、良性の腺腫様甲状腺腫にがんがごく稀に合併する場合には、精密検査や経過観察が必要となります。
甲状腺腫の自覚症状について
甲状腺腫瘍は、大きくなるまで自覚症状がほとんど現れず、早期段階で甲状腺機能異常(ホルモン異常)を引き起こすこともほぼありません。そのため、健康診断の超音波検査で偶然発見される場合や、触ってわかるほど大きなしこりになった段階でようやく気づかれることが多いです。それでも体調に明らかな変化がないことから、放置されてしまうケースも少なくありません。
甲状腺のしこりの大部分(約90%)は良性のため、過度に心配する必要はありません。ただし、治療が必要な悪性腫瘍である可能性もあるので、首の腫れやしこりが気になる場合は、専門の医療機関で検査・診断を受けることをおすすめします。
甲状腺腫瘍の検査、診断の流れについて
甲状腺にしこりが見つかった場合、まずしこりの大きさとともに、悪性か良性かを調べます。この際、ご家族に甲状腺疾患のある方がいるかどうかは、重要な問診項目の一つとなります。主な検査としては、血液検査、超音波検査、さらに腫瘍に対しては穿刺吸引細胞診(腫瘍に針を刺して細胞を採取し、顕微鏡で良性・悪性を調べる検査)を行います。
血液検査
血液検査では、甲状腺のはたらきの異常(ホルモン)検査や全身への影響を各検査項目の数値から判断します。悪性腫瘍が疑われる場合には、特にサイログロブリンや特殊な腫瘍マーカーなどの数値を確認します。
超音波検査
超音波検査では、しこりの有無や大きさが確認できるだけでなく、経験豊富な甲状腺専門医や技師であれば、腫瘍の形状や輝度(明るさや暗さ)からある程度、良性・悪性を判別することが可能です。
穿刺吸引細胞診
穿刺吸引細胞診では、甲状腺に細い針を刺して直接細胞を採取し、その細胞を顕微鏡などで調べます。この検査は、しこり(結節)の良性・悪性を診断するために用いられます。
首に針を刺すという行為に対して不安を感じる患者さんも少なくありませんが、当院では超音波でしこりの位置や形状を確認しながら検査を行い、患者さんに安心して検査を受けていただけるよう、適宜声をかけながら実施しています。なお、すべての腫瘍に対して穿刺吸引細胞診を行うわけではありません。超音波検査の所見から明らかに良性と判断される場合には、この検査を省略することもあります。
悪性と診断された場合について
病巣を取り除く手術が基本的な治療方法ですが、その他にも放射線療法や薬物療法があります。重要な点としては、甲状腺がんは種類によって特徴が異なり、それに応じて検査方法や治療法、さらには予後も大きく異なります。最も頻度が高い乳頭がんに関しては、多くの場合、進行が非常に緩やかであるため、過度に不安を感じる必要はありません。まずは担当医と十分に相談しながら治療方針を決めていくことが大切です。一方で、未分化がんなどの、予後が極めて厳しく、診断後すぐに治療を開始する必要がある種類の悪性腫瘍も存在します。そのため、それぞれのがんの特徴や治療法については、担当医としっかり話し合いながら治療を進めることが重要です。
次回は 小山イーストクリニックの甲状腺診療の特徴について